肥大型心筋症 HCM
Hypertrophic Cardiomyopathy
【病態】心室中隔を中心とした心室の不均等な肥大に伴う拡張障害
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【問診】
家族歴:突然死(半数以上が常染色体顕性遺伝)
【身体所見】
胸骨左縁第3肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音(→大動脈弁あるいは左室流出路由来の心雑音の可能性
【検査】
左室拡張末期圧上昇
心電図:T波の陰転化。不整脈。ストレインパターンのST-T変化を伴う左室肥大
Holter心電図で非持続性心室頻拍を数回認め,ふらつきを自覚していた.
心エコー:肥厚の分布と程度,心室内圧較差の評価,僧帽弁閉鎖不全の有無など
左室心室中隔壁厚22.5mm,後壁厚8.6mm(→非対称性中隔肥大(ASH)
拡張期径38.0mm,左室駆出率79.6%であり,有意な弁膜症や左室流出路の圧較差を認めなかった(→非閉塞性肥大型心筋症
胸部X線写真:心胸郭比45%,肺うっ血と胸水貯留を認めない.
心臓カテーテル検査:冠動脈に狭窄病変を認めない.
心臓造影MRI:中隔の心筋中層に遅延造影を認めた.(→肥大型心筋症における突然死のリスクファクター
心筋細胞の錯綜配列。間質の線維化
サルコメア蛋白の遺伝子異常(家族歴ありで50%、その他15%)
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心電図:左側胸部誘導の高いR波(V5のR波高は3.6mV程度),V4からV6にストレイン型のST低下,V3からV6に陰性T波を認める.著明な左室肥大の所見である.虚血性変化との鑑別も必要. 【治療】
心房細動の管理:抗不整脈薬,抗凝固薬,カテーテルアブレーションなど
左室内圧較差の是正(HOCMの場合):
陰性変力作用により左室内圧較差が減少→めまいや失神発作などの症状改善
陰性変時作用により拡張期が延長→間接的に左室拡張能が改善→運動時の心拍数増加も抑えられる→労作時息切れや呼吸困難などの症状改善、(心筋酸素需要減少→)心筋虚血による胸痛も改善
陰性変力を有する。
ジヒドロピジン系カルシウム拮抗薬は末梢血管拡張作用により、左室流出路圧較差を増大させるため、使用には注意
レニン・アンジオテンシン系の抑制のより、心筋肥大への治療効果が期待
血管拡張作用を有する。HOCMでは左室流失路狭窄を増悪させる可能性
〇外科的治療,経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA),ペースメーカ植込み
突然死予防:過度な運動の禁止,β遮断薬,アミオダロン,植込み型除細動器
■HCMの突然死のリスクファクター
●6ヵ月以内の心原性あるいは原因不明の失神 #意識消失 ●左室壁厚30mm以上の著明な肥大
●2014年ESCガイドライン計算式にてハイリスク
●突然死の家族歴
●運動時の血圧反応異常